2025年7月24日放送 第88回
ざっくりあらすじ
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要〈世良公則〉が2週間の演奏旅行へ。蝶子〈古村比呂〉は加津子を連れ、中山音吉〈片岡鶴太郎〉・はる〈曽川留三子〉夫妻と夕食三昧で羽伸ばし。
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恩師・神谷容〈役所広司〉と田所邦子〈宮崎萬純〉が来訪。童話だけでは生活が厳しい神谷は日雇い仕事で手にマメを作り、邦子が差し出す金を「施しは侮辱」と拒む。
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冬の空気に滝川の故郷を思い出す蝶子と邦子。帰省から遠ざかる年月の重さがこたつとミカンの甘さとともに滲む。
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泰輔〈前田吟〉・富子〈佐藤オリエ〉宅に集う蝶子たち。翌日、蝶子と安乃(近藤絵麻)は浅草でお汁粉を食べつつ新しい櫛のプレゼント。滝川から持って来たであろう古い櫛を線路へ投げ捨てる安乃、決別の象徴か。
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数日後、“19ヒ カツコツレ サッポロコウカイドウニ コラレタシ カナメ”――要からの電報が届き、札幌行きを示唆して幕。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | 要「俺がいないからこそ家を守るべきだろ」 | 演奏旅行前でもブレない亭主関白ぶり |
2 | 中山はる「岩崎さん、いつも演奏旅行行ってるといいね」 | “鬼の居ぬ間”発言にお茶の間苦笑い |
3 | 神谷「施しはかえって侮辱だ」 | プライドと苦境がせめぎ合う名台詞 |
4 | 安乃、滝川時代のものと思われる櫛を線路へ投げる | 故郷との決別を無言で語るかのような秀逸なカット |
5 | 電報『サッポロコウカイドウニ コラレタシ』 | 離れてなお存在感を放つ要の招待状 |
私が感じたポイント
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神谷先生の手のマメと「侮辱だ」発言に、戦前の男性の矜持を見ました。邦子の切ない表情が恋の再点火を予感させます。
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音吉夫妻との“持ち寄り夕食”がほっこり。要さん不在を楽しむ本音トークがリアルで笑える。
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冬=滝川の記憶装置。こたつ・ミカン・雪景色が故郷を呼び戻す演出が巧みでした。
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安乃の古い櫛を捨てるシーンはサイレントながら強烈。女性が過去を断ち切る瞬間の清々しさと哀しさが同居。
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最後の電報で札幌コンサートへ呼ばれる展開は、要さんとの距離感・夫婦の再接近をどう描くのか期待値大です。
まとめ――鬼の留守も、心は忙しい
第88回は「夫留守で羽伸ばし」回かと思いきや、神谷先生の苦境や故郷の記憶、要さんからの電報と感情の起伏がギュッと詰まった一話でした。要さんの不在がむしろ人間模様を浮き彫りにし、電報一枚で再び物語の中心に戻ってくる構成が見事。札幌で夫婦はすれ違いを埋められるのか、それとも――。
あなたなら、過去と今を分ける“古い櫛”を捨てられますか?