2025年7月23日放送 第87回
ざっくりあらすじ
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銀座の喫茶店「泉」が、マスター河本〈梅津栄〉の妻の死を機に閉店の危機に。店を“そのまま”受け継ぐ後継者を探していると知った蝶子〈古村比呂〉。
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蝶子と連平〈春風亭小朝〉は、叔父の泰輔〈前田吟〉に買い取りを打診するが、妻の富子〈佐藤オリエ〉は新規事業に消極的。
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富子を泉へ連れ出し、マスターが淹れたクリームソーダの一口で心が軟化。泰輔夫妻が店を引き継ぐことを決断。
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蝶子は“女マスター”就任を夢想するも、実際の後任は亡き奥さんの姪に決定し肩透かし。
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閉店前夜、泉で縁者が集まり送別パーティー。要〈世良公則〉・連平・坂上の演奏が響く中、軍服姿の頼介〈杉本哲太〉が政治談義で一触即発となるが、蝶子が場を収める。
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シャンソンのレコードが流れ、マスターは静かに東京を後に――思い出の店は新たな船出へ。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | 河本マスター「妻を失ってから力がスッと抜けましてね」 | 喪失感と店への責任が同時に滲む一言 |
2 | 富子「おいしい…」クリームソーダ初啜り | 氷が解ける音まで聞こえそうな転換点 |
3 | 蝶子「ここで口喧嘩もし、仲直りもし」 | 泉が青春のアルバムであることを代弁 |
4 | 連平「そっくりそのまま引き継ぐ人、いるじゃない」 | 突拍子な発想が未来を動かす瞬間 |
5 | 頼介「クーデターは政府の無策への怒りだ」 | 戦時下の空気を一気に引き寄せる危うい台詞 |
私が感じたポイント
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クリームソーダ一杯で富子さんの心が溶ける描写が秀逸。味覚がドラマのギアを回す好例でした。
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泉マスターと蝶子夫妻の“似た者同士”エピソードが、長年の夫婦像を鏡写しに。要さん〈世良公則〉の表情がどこか照れくさそうで可愛らしい。
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蝶子の“女マスター”妄想が即座に砕かれる展開、夢と現実の落差がむしろ微笑ましいです。
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頼介の軍人視点と市井の音楽家たちの温度差が、太平洋戦争目前の空気を濃く漂わせました。青春と戦争の交差点を感じさせる苦味。
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シャンソンのレコードで店を締める演出がエモーショナル。昭和の銀座文化が一枚の盤とともに時代を越えるようでした。
まとめ――思い出の“味”が未来を連れて来る
第87回は、喫茶店「泉」を巡るバトンパスの物語。クリームソーダが凍った心を溶かし、思い出の場所が次世代へ受け継がれていく様は、昭和という時代の優しさと確かな逞しさを映していました。一方で戦争の影は確実に近づき、青春のテーブルにも薄い緊張が。次回、泉の新マスターはこの灯をどう守るのか、そして頼介が抱える葛藤は物語にどんな波紋を広げるのか――。
あなたには、“忘れたくない味”がありますか?