2025年6月14日放送の第72回は、2年ぶりに姿を見せた頼介(杉本哲太)の軍服姿と、邦ちゃん(宮崎萬純)の恋の後始末、そしてチョッちゃん(古村比呂)の妊娠発覚まで、怒涛の出来事が詰まった15分だった。時代の暗雲が濃くなるなか、登場人物たちが見せた“逃げない覚悟”と“支え合い”を振り返る。
軍服で帰った頼介 「もう逃げない」という宣言
野々村家に現れた頼介は、かつての放浪青年とは別人のように背筋を伸ばし軍帽を被っていた。「戦場からは逃げられん」と漏らす声に、自らを追い込む覚悟と諦念が滲む。幼馴染のチョッちゃんに対しても「おめでとうございます」「幸せですか」と敬語を使う距離感が切なかった。
要さんへの謝罪と“未熟”という言葉
頼介は過去に要(世良公則)を殴って姿を消したことを正式に謝罪。要も「あの頃は不真面目だった」と非を認める。頼介が「まだ未熟だった」と口にしたとき、軍服の硬さの裏に残る自責と怖れがのぞいた。
安乃のビンタににじむ兄妹の痛み
妹・安乃(近藤絵麻)は再会するや否や頼介の頬を叩き、「兄ちゃんはいつも逃げてばかり!」と泣き崩れる。怒りと安堵が入り混じったビンタは、家族の愛の裏返しだった。
泉のマスター、邦ちゃんを守る大人の矜持
喫茶「泉」のマスターは、邦ちゃんに近づいた遊び人を「帰れ」と一喝。北海道から上京した娘たちを陰ながら守り続ける姿に、昭和の“粋”と“優しさ”が光った。
三人での本音の対話——チョッちゃん×邦ちゃん×神谷先生
チョッちゃん・邦ちゃん・神谷先生(役所広司)が膝を突き合わせる。邦ちゃんは遊び人が絵描きではないことも、ただの甘い言葉だと知っていたと告白し、「寂しかっただけ」と涙。北海道弁で言い合う二人に、神谷先生が空知高女の頃と同じ淡々とした口調で「それは逃げだぞ田所くん、逃げたらうまくないべ!」と諭す。三人の対話が邦ちゃんを再び現実へ引き戻した。
邦ちゃんの再出発とケーキの報告
遊び人と別れた邦ちゃんはケーキを抱えてチョッちゃん宅へ。「強がるのはもうやめる」と笑顔で宣言し、ようやく素直な自分を取り戻す。そばに誰かがいる生活を羨んでいた本音も語り、二人の友情が一段と深まった。
チョッちゃん妊娠判明 要さんのバイオリン胎教
その矢先、チョッちゃんが体調変化を訴え、邦ちゃんが急いで病院へ同行。妊娠が確定すると、帰宅した要は大喜びし、赤ちゃんに向けてバイオリンを奏でる。要の音色が家を優しく包んだ。個人的な感想としては「一流のバイオリンをお腹の子はどんな気持ちで聴いてるんだろう」と思った。
道産子視点:北海道弁の温度
「うまくない」「ゆるくない」などドラマに散りばめられた北海道弁は、道産子の私にはすっと入るが、若い世代には新鮮かもしれない。それでも方言が持つ温度は、故郷のぬくもりを強調し、視聴者の心にやわらかな余韻を残した。
まとめ——逃げても戻れる場所がある強さ
頼介は軍服で覚悟を決め、邦ちゃんは恋の失敗から立ち直り、チョッちゃん夫妻には新たな命が芽生えた。戦争と不況の昭和でも、人は支え合って前に進める。逃げた先でもやり直せる——それが『チョッちゃん』の示す希望だった。