2025年6月13日放送の第55回は、中国派遣が翌日に控えた夜、嵩(北村匠海)と八木上等兵(妻夫木聡)が交わした“生き残り”の哲学が強烈だった。酒盛りの喧噪の裏で語られる本音、旧友との邂逅、そして明日をも知れぬ命──不安と希望がない交ぜになった15分を振り返る。
出発前夜、騒げない二人の静けさ
隊舎は酒と軍歌で大騒ぎ。それでも八木上等兵は「バカ騒ぎは性に合わん」と外へ。後を追った嵩は星を見上げ、「明日をも知れぬ命だというのに、よく騒いでいられる」と本音を漏らす。八木の答えは騒いでいないと「不安に押し潰されてしまうから」。──八木上等兵の言葉は視聴者にも刺さる一言だった。
不安との向き合い方は人それぞれ、私なら不安な時はバカ騒ぎはできずにずっと考え込んでいるだろう。
弱い者が生き残る術は“ひきょう者”になること
嵩が「弱い自分が生き残るには?」と問うと、八木は「仲間がやられても仇を取ろうなんて思うな」と静かに告げる。戦友を守るより、自分が生きることを優先しろという極限のサバイバル論。似顔絵を「戦友殿」へ渡す嵩の感謝と、詩集好き同士が通じ合った背景が、二人の絆を際立たせた。
私は史実について先に情報を仕入れていないので、八木上等兵がどんな人物でこの先どうなるのかは一切分かっていない。なので、この「仲間がやられても仇を取ろうなんて思うな」って台詞が、八木上等兵がやられて仇を取ろうとする状況が来てしまうのではないかと心配でならない。
旧友・岩男との邂逅がもたらした一瞬の癒やし
子ども時代に遊んだ岩男と中国で再会。階級差で言葉を選びながらも笑い合う姿に、束の間の安らぎが流れる。しかし軍服が示す現実は非情で、昔のように対等に話すわけにはいかない切なさが滲んだ。
戦況を悟る八木、冷静さが際立つ
八木は「日本、危ないな」と情勢を分析。前回の次郎(中島歩)同様、冷静に状況を見抜く人物ほど危機を正しく捉えている。だからこそ“ひきょう者になっても生き抜け”という言葉が重い。
まとめ ー “ひきょう者”でも生きろ、明日を掴め
八木のサバイバル論は、戦場だけでなく今を生きる私たちにも問いを投げかける。信念か生存か──どちらを選ぶかは状況次第だが、まず「生きて帰る」ことが希望の第一歩。嵩と八木の約束が、次回以降の光となることを願いたい。